診療内容

新型コロナ後遺症

はじめに

当院では、新型コロナ後遺症/ワクチン長期副反応(後遺症)について、相談(診断書の発行を含む)、診断、治療を行っています。2020年に始まった、新型コロナ感染症は、世界的な問題であり、我が国にも大きな社会的な影響を与えています。2023年の5月8日からインフルエンザと同等の5類感染症に移行しましたが、新型コロナ後遺症の問題を含め今後に多くの課題を残しています。
図6-1は、我が国の最近の新型コロナ感染症の累計を示したものです。2023年3月5日現在で、3,326万人にも及んでいます。

2023年3月5日の日本全国の新型コロナ感染症の累計
図6-1. 2023年3月5日の日本全国の新型コロナ感染症の累計
10%に後遺症(3ケ月以上続く)があると、後遺症患者は332.6万人と推定されます。(NHK調べ)
新型コロナウイルス
罹患後症状
(後遺症)
・新型コロナウイルスにかかった後
・感染性がなくなったにもかかわらず
・少なくとも2か月以上持続
・他に明らかな原因がない

表6-1.WHOの新型コロナ後遺症の定義

表6-1は、WHOの新型コロナウイルスの後遺症の定義を示しています。これでは、他の原因がなく、新型コロナ罹患後、2か月以上症状が続くものと定義されています。多くの方は、軽症で治癒しますが、中には、このような、持続する症状を示す方がおられます。

新型コロナ後遺症の特徴
図6-2. 新型コロナ後遺症の特徴(小和瀬医師)

また、症状には、新型コロナの急性期から続く症状と、急性期から回復後に新しく出現する症状があります。また、症状の程度は、日々に変動を示すことが多いです。

疲労感・倦怠感記憶障害動悸
関節痛集中力低下下痢
筋肉痛不眠腹痛
咳や痰頭痛睡眠障害
息切れ抑うつ筋力低下
胸痛味覚障害 
脱毛嗅覚障害 

表6-2. 新型コロナウイルス後遺症の代表的な症状
新型コロナウイルス感染症COVID-19 診療の手引き(第9.0版)より(2023年2月)

表6-2は、新型コロナ後遺症の代表的な症状を示したものです。全身的な多彩な症状を示します。このなかで、疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛が最も代表的なものです。なかでも、疲労感・倦怠感は、中心的な症状で、そのため、重い場合は、仕事や学校を長期間休む例も稀ではありません。また、頭痛の訴えも多くあります。この場合、一般的な頭痛薬の効果がない例もあります。コロナは、肺に損傷を与えるため、息切れも多い症状の一つで、若い人でも息切れがして階段が登れない人もおられます。また、家の周りを一周することもできない人もおられます。肺機能検査で異常がでる場合もあります。

2020年に新型コロナ感染症が流行して以降、新型コロナの後遺症の人の相談が増えています。(発熱外来は行っていません)関連後遺症状としては、慢性疲労症候群のような全身倦怠感、肩こり、微熱、味覚障害、嗅覚障害、抑うつ症状、物忘れ、思考力低下などの認知障害(ブレインフォッグ:思考力の低下、集中力の低下、記憶力の低下、頭に霧がかかったような感じの症状)、物が二重に見える眼筋麻痺、強いめまい、帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛、咳、のどの違和感、鼻汁、くりかえす嘔吐、全身の関節痛、腕の痛み・しびれ、動悸、心筋梗塞、心膜炎・心筋炎、急性腎炎・腎不全など多彩な症状があります。 これらの患者の人に新経絡治療と漢方薬などで対処し、経過は良好です。心筋梗塞、心膜炎、急性腎炎は、専門医へ紹介し、治療しました。

新型コロナ後遺症の頻度

それでは、新型コロナ後遺症の頻度はどの程度あるのでしょうか?
図6-3は、英国国家統計局の発表した新型コロナ後遺症に関する論文です。これによると、新型コロナ感染者の10%に12週間以上続くコロナ後遺症が生じると報告しています。(The prevalence of long COVID symptoms and COVID-19 complications)これを、我が国の累計感染者数に適応すると、300万人近い人に後遺症が起こっている可能性があります。

長期続くCOVID症状とCOVID-19合併症の有病率の論文
図6-3. 長期続くCOVID症状とCOVID-19合併症の有病率の論文

米国で新型コロナ感染後遺症による就労困難者、フルタイム換算で約400万人とシンクタンク推定

米国ワシントンのシンクタンク、ブルッキングス研究所が2022年8月24日に公表したレポートは、新型コロナ感染症の後遺症で職場に復帰できない者がフルタイム換算で、約400万人いる可能性があると指摘した。米国疾病予防管理センター(CDC)によると、後遺症が残る割合は18歳~64歳では、5人に1人、65歳以上では4人に1人程度とされています(2022年6月6日記事)が、今回は、就労困難者の報告が行われた。
CDCによると、米国人の70%が新型コロナに感染し、うち、24.2%に後遺症があるとされている。これを生産年齢人口(15歳から64歳)に当てはめると、3,400万人に該当する。ミネアポリス連邦準備銀行の調査では、後遺症から回復したとの回答は50%で、残りの50%に当たる生産年齢人口の1,700万人がいまだに後遺症に苦しんでいることになる。また、後遺症により仕事に戻れていないとの回答は、各種調査で20%から22%となっており、労働時間の短縮を考慮すると、フルタイム換算で約400万人が後遺症により就労困難となっている可能性があるとしている。(宮野慶太氏)

表6-3.米国の新型コロナ感染後遺症のデータ
(JETRO日本貿易振興機構(ジェトロ)2022/9/7 ビジネス短信より引用


表6-3は、アメリカにおける新型コロナ後遺症について報告されたものです。後遺症で、就労できないひとが多いと報告されています。


当院では、現在、新型コロナ関連後遺症として帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛の方の治療を行っています。相談に応じています。