診療内容
認知症
認知症は、高齢化社会の最大の課題です。厚労省の推定では、今後わが国では、700万人の認知症の発症が見積もられています。そのため、その予防・治療は極めて重要です。新経絡治療は、これまで、家族のかたの依頼により、認知症の方の治療を行ってきました。その結果、早期治療によりこれを改善することが可能なことが分かりました。以下に実際の症例を紹介します。
認知症とは
発育の過程で得られた知能、記憶、理解力、言葉、行為、見当識、感情、意欲、性格、人格などの精神的機能や能力が脳の器質的な病変によって障害され、自立した日常生活・社会生活職業生活や円滑な人間関係を営めなくなった状態を言います。
従来の医学では、多くの場合、器質的な病変の改善が望めないため、認知症は非可逆性、非回復性です。
2013年5月、アメリカ精神医学会で採用されたDSM-5では、新たに6つの認知機能ドメイン(複雑性注意、実行機能、学習・記憶機能、言語機能、知覚・運動機能、社会的認知機能)のうち
(1)認知症major neurocognitive disorder(major NCD):1つ以上が著しく障害され、それによって日常生活上の活動性の自立が阻害された場合を言います。
(2)軽度認知障害 mild neurocognitive disorder(mild NCD): 1つ以上に軽度の障害が見られるが、それらの認知障害によっては、日常生活の活動性における自立能力は障害されない状態を言います。
*これまで認知症の前段階の状態として軽度認知障害があるが、これをDSM-Vでは、障害名として定義されています。
*DSM-Vでは、病因的分類として、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症(ピック病)、レビー小体病、血管病、頭部外傷、物質・薬物使用、HIV感染、プリオン病、パーキンソン病、ハンチントン病、それ以外の内科疾患が挙げられています。(南山堂医学大辞典より)
以下では、認知症の50%を占めるアルツハイマー型認知症についてお話します。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー病:初老期発症のタイプを記載したAlzheimerにちなんでアルツハイマー病と呼びます。
初老期では、40代後半~60代前半にかけ、高齢期では、60代後半以降に発症し、記憶障害、意欲障害、判断障害、失語、失行、失認、パーソナリティ障害、鏡現象、クリュヴァー・ビューシー症候群などが現れ、徐々に症状は進行し、高度の認知症に陥り。さらに、てんかん発作や筋固縮などの神経症状が加わり、最後は失外套症候群を示し、寝たきりになってしまう脳の変性疾患です。
脳の病理変化として老人班(アミロイドβタンパク質の沈着)、アルツハイマー神経原線維変化、神経細胞消失がみられ、脳の萎縮をきたします。(図7-1)
側頭葉内側部(海馬、海馬傍回)と側頭・頭頂・後頭葉接合部から病変が始まります。
病態は、アミロイドタンパク前駆体の異常切断、Aβの異常・早期沈着、Aβによる神経細胞障害(アミロイド仮説)神経細胞のリン酸化タウ蛋白の貯留が重要です。また、アセチルコリンなどの神経伝達物質の異常減少(アセチルコリン仮説)が背景にあります。
遺伝性では、家族性アルツハイマー病があり、第14、19、21染色体の遺伝子異常があります。
また、アミロイド蛋白前駆体でのアミノ酸配列の点変異の証明で遺伝性が指摘されています。
その他、酸化ストレス、炎症機転、微小循環異常、精製糖依存があります。
病態は不明である。
治療:アセチルコリン分解酵素阻害薬(ドネペジル)、神経細胞保護薬(メマンチン)が使用されます。認知症の進行を一時的に遅らせますが、認知症自体は改善させません。
非薬物療法(運動療法、回想法、音楽療法、アニマルセラピー、レクレーション療法など)、生活指導、デイケアなどが有用です。(南山堂医学大辞典より)
アルツハイマー病の悪化因子としての糖尿病
(健康ねっとより)
https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/dementia/2944#:~:text
最近の研究では、アルツハイマー病の原因として、糖尿病が注目され、原因としてほぼ確立してきています。まずその概要をお話しします。
インスリンの働き
糖尿病はインスリンの分泌量の減少によって発症する病気です。インスリンの働きには以下の2つがあります。
(1)血糖値を下げる。
(2)アミロイドβを分解し、脳細胞にたまるのを防ぐ
インスリンの働きは脳に大きな影響を与えるといわれています。インスリンの分泌量が減少すると、アミロイドβが蓄積されやすくなり、アミロイドβが脳細胞を破壊してしまいます。
糖尿病はアルツハイマー病のリスクを高めます
糖尿病はアルツハイマー病のリスクを高める可能性があります。具体的には、糖尿病を患っている場合、そうでない人と比較して約2倍アルツハイマー病になりやすいです。
さらに、糖尿病治療で生じる低血糖症状は脳へダメージを与えることも報告されています。
高血糖と低血糖は、脳を破壊する作用をします。
- A.インスリン抵抗性
-
高糖質な食事を摂り続け、2型糖尿病を発症すると、インスリンの働きが阻害されるインスリン抵抗性を発症します。(糖質制限の必要性)
インスリン抵抗性を発症すると、脳内のアミロイドβの蓄積が促進され、アルツハイマー型認知症を引き起こす要因になることがマウスを用いた実験で明らかになっています。 - B.動脈硬化
- 動脈硬化になると脳血流が非常に悪くなってしまいます。脳血流低下は、アミロイドβが凝集しやすくなり蓄積されます。(糖質制限の必要性)
動脈硬化を引き起こす原因には糖尿病・肥満・脂質異常症・高血圧が挙げられます。 - C.低血糖
- 糖尿病の治療をおこなうと低血糖になってしまう場合があります。低血糖状態は十分にブドウ糖がない状態を意味します。十分にブドウ糖がない状態は、脳の細胞の壊死が進みアルツハイマー病につながってしまいます。
アルツハイマー病の予防
糖尿病の予防が、アルツハイマー病の予防につながります。
(1)適度な運動 ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、エアロバイクといった有酸素運動、運動と脳を同時に動かす。例)ウォーキングをしながら100から3引き続ける。(脳の血流改善)
(2)糖質制限
(3)活発なコミュニケーション: 楽しくコミュニケーションを図ることによって、脳の神経細胞に刺激を与えることができると言われています。日頃人との関わりが多い人は糖尿病とアルツハイマーの予防となります。
(4)新経絡治療: 脳の血流改善と神経細胞の活性化が起こります。
認知症の新経絡治療例
当院では、2009年から、1)子供の認知症とも言われる発達障害の治療、2012年から、2)MTBIによる高次脳機能障害(外傷性の認知症)の治療に取り組み、発達障害の8-9割の改善、MTBIの高次脳機能障害の5割の改善を行ってきました。
新経絡治療は、脳神経細胞を活性化し、脳血流を上げる効果があり、これにより発達障害およびMTBIの高次脳機能障害(記憶障害、注意集中障害、遂行機能障害、社会的機能障害)を改善してきました。
アルツハイマー型認知症と発達障害、MTBIとの違いは、後者の原因が、気質伝播によるアスペルガー症候群などを除くと、脳外傷による高次脳機能障害によるものが多く、外傷による大脳皮質や軸索神経の損傷により発症することです。従って、その治療は、皮質や軸索線維の修復が中心になります。脳神経の修復には、新経絡治療による脳神経細胞の活性化と脳血流の改善が効果的です。
新経絡治療の説明で述べたように、手足の穴には、脳神経のブドウ糖代謝を活性化し、脳血流を改善する効果があります。これにより、脳神経の修復/再生が促進されます。これが、認知症に新経絡治療が有効な根拠です。脳損傷に起因する子供の発達障害では、これまで730例以上の治療を行い、その有効性が認められます。
そして、MTBIでは、頭部外傷による発達障害と重複しますが300例以上(交通事故症例は50例以上)の治療を行い、高次脳機能障害の改善効果があり、その有効性が認められます。
アルツハイマー型の認知症は、「脳の糖尿」と言われており、糖質・精製糖の過剰摂取と関連します。糖尿病は、糖質の過剰摂取と運動不足が2大原因です。アルツハイマー病と発達障害の原因の大きな違いは、アルツが糖質の過剰摂取や運動不足という生活習慣病を背景としていることです。
従って、アルツハイマー型の認知症の予防・治療には、
1)新経絡治療による脳細胞の活性化と脳血流の改善
2)糖質制限による糖尿病の改善
3)運動による、基礎代謝の改善による糖尿病の改善
4)散歩やコミュニケーションによる海馬の刺激。
を組み合わせて治療します。
認知症は、進行すると治療が困難となります。従って、1)予防が最も大切です。2)軽度の物忘れが始まった段階で、早期に治療を開始することが大切です。
これにより、認知症は予防・改善されます。
治療事例1
77歳 女性 認知症
- 職歴
- 40~70歳まで、販売員
- 食事の嗜好
-
パン、うどん好き ◎、タンパク質 卵○、肉○、魚△、とうふ○ も食べる。
朝:パン 昼:麺類が多い。 - 現病歴
-
1年前から物忘れが気になる。出かける時に、忘れ物を3回取りに帰る。
1人住まい。夜1回トイレに目が覚める。 - 治療
- 新経絡治療と糖質制限を行う。
- 治療経過
-
- 2回治療後
- 睡眠良好。夜のおしっこ減少している。食事、さんま、ブタ鍋、ひじき、なむる、にしている。
- 4回治療後
- 忘れ物が減少している。
- 6回治療後
- 物忘れ少し良い。腹囲が少し改善した。
- 13回治療後
- 物忘れ低下している。思い出すのが早くなる。
- 22回治療後
- 物忘れが減少。動物想起テスト12個になる。
- 25回治療後
- 娘と兄弟みたいと言われる。新経絡治療で若返る。
- 45回治療後
- 睡眠良好。物忘れ改善している。物を置いたところを、思い出すのが早くなった。本を、2-3分読んでいる。塗り絵が良いとNHKで聴いたので、してみようと思う。意欲が湧いてきた。
- 51回治療後
- 忘れ物は、1日1回のみになる。最近は、忘れ物をチェックするようになった。以前は、2-3回忘れ物をして家に取りに帰る状態だった。
- 55回治療後
- 友人と会い、若返ったと言われる。
- 66回治療後
- 物を置いた場所を思い出せる。治療終了。
治療事例2
82歳 女性 認知症(レビー小体型)、へバーデン結節
- 現病
-
8年前にご主人が亡くなり、以後一人住まいをしている。
2年前から物忘れがあり、認知症の診断を受け、薬(ドネペジル)を処方される。物忘れ軽減するも、イライラするようになり、音に過敏になる。2か月後からメマンチンに変更し、内服中。気分は落ちついているが、記憶力は低下している。薬以外の治療法を検討するため、娘さんと当院を受診した。娘さんより、待ち合わせを忘れることがあるとのこと。
長谷川式簡易知能評価 24/30表7-1. 血液検査(初診時) 項目 測定値 正常範囲 総コレステロール㎎/dl 240 142-219 中性脂肪mg/dl 108 30-149 HDLコレステロールmg/dl 61 40-103 LDLコレステロールmg/dl 158 65-139 血糖(前)mg/dl 83 73-109 CRP定量 mg/dl 0.05未満(-) 0.14以下 インスリン 昼食後μU/ml 8.9 3.0-15.0 HbA1c % 5.5 4.6-6.2 - 嗜好品
- 甘いものを好む:饅頭、菓子パン、カップケーキ、クッキーなどを毎日食べる。
自分の母親は、甘いものは、好きではなかった。
18歳から就職して甘いものを食べるようになった
18歳から24歳まで事務、販売、アルバイトをする。
50~54歳 お菓子屋でアルバイトをして、菓子(和菓子、饅頭)を持ち帰り、食べる習慣がつく。この60年間は、家でもおやつを毎日食べる。せんべいなど、1日に1/3袋食べる。
お菓子による精製糖の摂りすぎが問題です。
〇は現在、△は過去。合計評点は、29点で、過剰です。(22点以上は過剰と判断) - 家族の話
- 認知症で、今はどうにか一人暮らしをしていますが、最近は、かなり物忘れがひどくなっています。薬を飲むのをよく忘れます。お薬以外の治療法があるのを知り受診しました。
- 治療経過
-
1回の左脳治療で図形、字がきれいになり、効果を認める。
- 1回治療後
- 甘いものを控えている。理学療法の2人の先生を同一の人と思っていたが、2人が別の人と分かった。
- 2回治療後
- おしゃべりをする。意欲が出てきた。笑うことも増えた。甘いものは食べない。
うす皮をはぐように良くなっている。治療のため、エレベータで2Fに行くことが分かっている。 - 4回治療後
- 甘いものを控えている。本を読んでいる。
- 5回治療後
- 物忘れはある。洗濯を自分でした。甘いものを減らしている。
- 6回治療後
- 街で待ち合わせをするが上手くいく。治療前は、待ち合わせを忘れていた。
- 8回治療後
- 昼と晩に自分で食事を作る。鯵を煮て食べる。
- 10回治療後
- 会話はスムーズになる。物忘れあり。紙にメモを書くこと。
- 12回治療後
- 日常のことをするのを忘れることあり。
- 13回治療後
- 忘れることあり。最近のことを覚えている。「ヤマボウシの花を覚えている。」新しいことを覚えている。
- 14回治療後
- 長谷川式 25/30
表7-3. 知ってる野菜 初診時(2022/5/9) 治療後(2022/7/4) 大根 にんじん はくさい 大根 レタス じゃがいも 玉ねぎ にんじん 玉ねぎ アスパラ じゃがいも キャベツ キュウリ みずな さといも キュウリ ごぼう トマト はらんきょう 表7-4. 遅延再生記憶
(先に言った3つの言葉を後で思い出す検査)初診時(2022/5/9) 治療後(2022/7/4) 桜 桜 ネコ ネコ のりもの?(不正解) 電車 表7-5. 即時再生記憶
(時計、鉛筆、メモなど提示した5つの品物の記憶再生検査)初診時(2022/5/9) 治療後(2022/7/4) 2点 3点 「目に浮かぶが言葉に出てこない。」と述べる。 のりもの?(不正解) 電車 - 17回治療後
- 経過は良い。自分で覚えていて薬を飲む。
- 20回治療後
- 甘いものを減らすことに慣れた。買い物に行ける。
- 21回治療後
- 話がしっかりしてきた。スーパーへの最短距離は、母の方がわかる。話を中断しても思い出して話せる。
- 22回治療後
- 料理をしている。
- 23回治療後
- 曜日が分かるようになる。初めて、日にちが分かるようになる。
- 24回治療後
- レストランで食事後、勘定にいつもはお札を出すのに、端数はコインを出した。皆が驚く。
- 25回治療後
- デイサービスで、昨年秋は、娘が持っていくものを用意していたが、自分で用意していくようになった。
- 26回治療後
- 認知症になって。3~4か月は料理をしなかったが、1か月前から料理を始めた。
- 28回治療後
- 自分で小松菜、キノコ、オクラの油揚げ、煮びたしの料理をした。
- 33回治療後
- 料理をしている。布団を干している。ローマ字で名前を書く。
- 34回治療後
- 卵とじ料理をする。治療継続中です。
- まとめ
- 新経絡治療、糖質制限により、日常行動が見違えるほど改善しています。今後も、定期的な治療により、認知症の改善が維持されると考えられます。
治療事例3
89歳 男性 認知症
- 現病
- 新型コロナでの入院前は、要介護Iで、1人で、散歩、風呂、食事はできていた。
3ケ月前に、新型コロナに罹患して、肺炎になり、7週間入院治療を受ける。動脈血酸素飽和度が90まで下がる。入院中は、2週間、寝たきりで、その後リハビリで、階段がのぼれるようになって帰る。自宅の7〜8階はエレベータがなく、徒歩で上がるため階段歩行はむつかしい。入院して、一気に認知症が進行し、介護Vになる。現在でも1人での散歩難しいため付き添いがいる。風呂に一人で入れない。食事は、自分で食べられる。話はできる。家族の認識はしている。友人の無くなったのは忘れている。
新経絡治療を連日、集中的に行い、重度の認知症が改善した事例です。 - 治療経過
-
- 1回治療後
- 新経絡治療開始。1回目の治療後、自分でお風呂入ろうとした。
- 3回治療後
- 服・ズボンを出して置いておくと、自分で着ることができた。夜中おむつに小便していたのがほとんど無くなり、トイレに行ってするようになる。
- 5回治療後
- 家から500mくらいの店まで自分で歩くことができるようになる。
- 8回治療後
- お風呂で、自分で身体洗うことができた。歩行器で1.5kmくらい歩くことができた。
- 10回治療後
- じっと長い間、地面に座ることができるようになった。家から徒歩2分の公園まで自分で歩くことができた。
- 12回治療後
- 家の中で自分で立って歩くことが増えた。
- 13回治療後
- 自分から、家族にお菓子を分けてくれるようになった。一時期、全く新聞を読んでいなかったのが、読むようになってきた。
- 17回治療後
- 自宅から200mくらいのお店まで杖をついて歩くことができた。
- 19回治療後
- 自宅から1.6kmくらい杖をついて歩くことができた。
- 20回治療後
- 自分でパジャマに着替えることができるようになった。
- 26回治療後
- 自分から新聞を見ることが増えた。
- 32回治療後
- 自分でパジャマを畳むことができた。
- 34回治療後
- 自分から悪いことをしている孫に注意していた。
- 44回治療後
- 着替えるよう指示すると自分で着替えた。自分で杖をついて、自宅から350mの駅まで往復1時間で歩くことができた。
- 46回治療後
- デイサービスのお迎えの車に乗る時に車椅子乗ってたのが無くなり、自分で車に座れるようになった。
- 55回治療後
- デイサービスの方が「**さんしっかり歩くようになりましたね」と驚いてた。
- 61回治療後
- 遠くにいる娘と元気よく笑って、電話してた。普通に電話できるようになっていて、家族が驚く。
- 85回治療後
- 階段を上るスピードが上がった。
- まとめ
- このように、重度の認知症も、集中的に新経絡治療をすることで、改善します。これを維持するために、定期的に治療を続けます。
アルツハイマーは脳の糖尿病説
アルツハイマー(以下、アルツと言います)は、世界的、特にアジアで増え続ける病気です。アジアに関連するのは、米食の関連があると考えられます。認知症の50%がアルツハイマー、30% 脳血管性、12% アルツ+脳血管性合併、残り レビー小体型認知症などです。
1950年代までは、アルツは欧米諸国では時々見られるものの、日本では稀な病気と考えられてきました。
わが国では、2012年で認知症と予備軍を含めて620万人、65歳以上で7人に1人、85歳以上で4人に1人かかります。そのうち、320万人がアルツハイマー病です。2025年には、675-730万人が認知症になると推定されます。
アメリカでは、現在、アルツの患者数は、530万人で、2050年には、3倍になると推定されています。
A.アルツハイマーの進行度
アルツハイマー病は、ドイツのフランクフルツの精神科医アロイス・アルツハイマーが発見しました。記憶障害と妄想を持つ51歳の女性を診察したのが切っ掛けです。その女性の死後、脳を解剖し、老人斑、神経原線維変化などの病変を詳しく記載しました。1906年11月南西ドイツ精神医学会で報告しました。
B.アルツハイマーの危険因子
アルツハィマー病の最大の危険因子は、糖尿病です。他は、家族歴、特定の遺伝子、喫煙、アルコール、高血圧、脂質異常、不適切な血圧降下剤の使用、難聴など。両親のどちらかが、アルツの場合は、リスクは10%から30%に上昇します。 とくに、その親が早期発症の場合は、リスクが大きくなります。
- ①遺伝因子
- 晩発性家族性アルツで、複数の遺伝子的素質が発病と関連する。
ApoEという遺伝子が関連する。ApoEはアポリポ蛋白Eというコレステロールの運搬に関連する蛋白質をつくる遺伝子。アミノ酸配列が1個異なるだけで2型、3型、4型の区別がある。アルツの発病リスクは、ApoE4型が高いです。 - ➁難聴
- 音や光などの感覚刺激を過剰に受けることも、老化の進行が促進され、アルツの促進因子になる。
70歳を超えた人の2/3が、難聴を抱える。アメリカの国立加齢研究所(NIA)の研究結果で、60歳以上の人では、アルツのリスクの36%が難聴と関係。聴力が10dB低下するごとに、アルツのリスクが20%ずつ増加する。
アジアは世界的に見て、老人性難聴が多い。騒音が多く、通勤途上で、イヤホーンで音楽を楽しむ傾向が顕著で、老人性難聴の増加は、将来のアルツの増加を引き起す。 - ③加齢性黄斑変性
- リスクは、受ける光の量が日常的大きいほど、上昇する。感覚刺激を過剰に受けると、老化が早く進行する。
- ④アルコール
- 脳は、アルコールに敏感で、ビール一杯で5000個の神経細胞が死ぬとされています。
- ⑤エストロゲンの低下(閉経)
- 女性は、男性の2.5倍アルツにかかり易い。女性は、卵巣から出ているエストロゲンが急激に失われることが大きな理由です。閉経はアルツを引き起すきっかけになります。エストロゲンの作用は、①インスリン成長因子-1(IGF-1)と言われるインスリンとよく似た記憶物質として働くホルモンの発現を促す、②脳内の神経伝達物質の作用にいい影響を与える、記憶に関係が深いアセチルコリンを増やす、③抗酸化作用、細胞死を押さえる作用、脳の血流を良くする作用、脳内でのブドウ糖運搬を活性化させる作用がある、④アルツの原因物質であるアミロイドβ前駆体ができるのを押さえる。そのため、女性では、アルツになりやすい。
女性は閉経後、副腎からわずかに分泌される男性ホルモンのテストステロンをエストロゲンに変えます。しかし、女性のエストロゲンは70歳の時点で底を突きます。
これに対して、男性では、テストステロンは、年齢とともに減少するが、そのスピードは女性に比べて緩やかで、70歳になっても底をつかない。男性のテストステロンは、アロマターゼという酵素の作用を受けて、女性ホルモンのエストトゲンに変わって。腦に働き、記憶を上昇させる。50歳を超えると、エストロゲンは、男性では、同じ年齢の女性よりも多いため、アルツになりにくいとされています。
C. 糖尿病はアルツハイマ―病の最大の原因
糖尿病とアルツハイマー病の関係の研究で有名な、ロッテルダムスタディの結果は「糖尿病は、アルツハイマー病の発症リスクを二倍にする」としています。また、日本でも、九州大学第二内科が1961年から行っている福岡市に隣接した久山町研究で、予備軍を含む糖尿病患者では、アルツハイマ―病にかかるリスクが非糖尿病患者の二倍に上ると報告されています。従って、アルツハイマー病の予防には、糖質制限と運動により、糖尿病を予防することが必要不可欠です。*ロッテルダム研究:ロッテルダム研究またはERGO(オランダ語:Erasmus Rotterdam Gezondheid Onderzoek)は、前向きの人口ベースのコホート研究です。ロッテルダム研究の目的は、中年および晩年の慢性疾患の病因、前臨床段階、予後、および潜在的な介入ターゲットを調査することです。この研究は、心臓血管、神経、眼科、肝臓、内分泌、皮膚科、耳鼻咽喉科、呼吸器系、自発運動性、精神疾患などのいくつかの疾患に焦点を当てています。
歴史:アルバート・ホフマン教授が率いるエラスムス医療センターの疫学・生物統計学部の研究者は、1980年代半ばに、慢性疾患を抱える高齢者の割合の増加への対応としてこの研究を概念化しました。この研究は、1990年にオランダのロッテルダムのオムモールト地区で設立されました。1991年3月26日、ジュリアナ王女はロッテルダムのブリアンドプラッツにERGO研究センターを開設しました。
*インスリンの記憶効果:インスリンを鼻から吸入すると、15分後に記憶力が上昇することが分かっています。また、インスリンは、記憶の場である海馬のブドウ糖の取り込みを促進し、記憶力を高めます。
*インスリン分解酵素はインスリンの分解だけでなく、アルツハイマー病の原因になるアミロイドβ蛋白を分解する作用も持っています。インスリン分解酵素が高インスリンのためインスリン分解に大量に消費されると、アミロイドβ蛋白の分解ができなくなり、アルツハイマー病に拍車をかけます。
参考文献:鬼頭昭三、新郷明子 「アルツハイマー病は「脳の糖尿病」、講談社、2017
我が国の糖尿病患者数の増加
国民健康・栄養調査によると、1997年に約690万人だった糖尿病患者数は、2016年には約1000万人になり、29年間で約310万人も増加しています。糖尿病予備軍の約1000万人を加えると、約2000万人にも上ります。これは国民6人に1人とという驚異的な人数です。まとめ
認知症の中心を占めるアルツハイマー病は、脳の糖尿病であり、運動、糖質制限と新経絡治療による早期治療で改善することができます。